「(農薬・PCBなど)食・環境中の化学物質が及ぼす作用」
・・黒田洋一郎・木村‐黒田純子氏の論文から・・
発達障害と中枢性過敏症候群(CSS:線維筋痛症や化学物質過敏症など)との関係
線維筋痛症や化学物質過敏症患者さんとのやりとりのなかで、患者さんやその家族に、発達障害(アスペルガーやADHD,各種の学習障害など)の人が相当おられることに気がつきました。
調べてみると、すでに「自閉症の子どもが化学物質に過敏な反応を示す」研究結果が発表され、(下記HP参照)、発達障害と、さまざまな刺激に対して脳が過敏になるCSSが、共通の素因によって発症・悪化する可能性が疑われます。
この研究によれば、自閉症の子どもが「食・環境中の化学物質を完全に排除することで完治しています。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/asti/autistic_traits.html
食事管理と環境化学物質への曝露の除去による自閉症特性の減少(カレン・M・スリマク)
「食事の管理と環境化学物質への曝露を除去することによって、自閉症の症状が消えた
それでは、食・環境中の化学物質(農薬・PCBなど)は、人の脳にどのように作用し、害作用を及ぼすのでしょうか。
黒田洋一郎・環境脳神経科学情報センター代表、首都大学東京客員教授は、この恐るべき作用機序を明らかにし、これらの害について警告を発しています。
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黒田洋一郎
1943年、東京都生まれ。1966年、東京大学農学部農芸化学科卒業。1966年、東京大学農学部農芸化学科卒業。東京大学応用微生物研究所(現:分子細胞生物学研究所)、ロンドン大学精神医学研究所を経て、東京都神経化学総合研究所研究員。フランス国立科学研究機構・神経化学センター客員研究員。東京都神経化学総合研究所参事研究員。東京都神経化学総合研究所参事研究員。専門は分子細胞神経生物学、中枢神経毒性学。環境脳神経科学情報センター代表、首都大学東京客員教授
木村‐黒田純子
東京都生まれ。1975年、お茶の水女子大学理学部生物学科卒業、1977年、同大学院理学系生物学修士課程修了。埼玉大学理工学部研究生を経て、1977年より、東京都神経科学総合研究所、微生物学研究室研究職員。1997年より同研究所、脳構造研究部門を経て発生形態研究部門主任。2011年、同研究所の統合に伴い公益財団法人東京都医学総合研究所、脳発達・神経再生研究分野、神経再生研究室、研究員、2013年より同研究所、こどもの脳プロジェクト、研究員
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ラボ会員・理事の大中さんが黒田氏に交渉して「科学」(2013年Vol.83 No.6)に掲載された黒田氏の論文をラボHPに掲載する許可をいただきました。下記にPDFの形で掲載します。
(自閉症・ADHDなど発達障害増加の原因としての環境化学物質:有機リン系、ネオニコチノイド系農薬の危険性)
黒田論文(上)
黒田論文(下)
(上記リンクをクリックすると、PDFファイルが開きます。)
上記のように、線維筋痛症や化学物質過敏症などのCSSは、さまざまな刺激に対して脳中枢が過敏になる症候群です。CSS患者本人やご家族に、発達障害の人が多く発生しているようすをみると、発達障害と同じように、食・環境中の化学物質などによる刺激が、CSSの発症や悪化に関わっている可能性が疑われます。
線維筋痛症が完治した人の回復経過をみると、(怪我や手術、歯科治療、姿勢の悪さなどからくる)身体のゆがみが脳に伝える痛み信号が脳への刺激となって発症につながり、それを是正することで治っていると感じますが、脳が過敏になることで化学物質にも過敏になり、農薬をはじめとする化学物質への曝露がさらなる悪化へつながる可能性もあると思います。
そう考えてみると、食・環境中の化学物質の曝露を防ぐことが、回復への基本戦略になるでしょう。
日本では、「食・環境中の化学物質増加と疾病の増加の関連」について、しっかりした医学的な研究はほとんどなされていません。これも、CSSや発達障害の回復が難渋する一因になっています。当事者が自分自身で知識を得て、それを回復に活かすことが何より大切でしょう。
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