患者の声「民間療法で回復」

患者 大中幸子(NPO法人食育推進ネットワーク福岡・理事長、市民健康ラボラトリー・理事)

大中さんは、電磁波過敏症(ES)を発症し、化学物質にも過敏な患者さんです。
ご自分の経験を社会の改善に活かしたいという志を持ち、様々な活動をしておられます。

「予防原則は、生きとしいけるものへの思いやり、未来への愛」

☆始まり

長らく新築の家に住み、シックハウス状態が続いた娘達が、普通の社会生活が困難になり、外出もままならなくなりました。東京から帰省してきて闘病生活に入ったちょうどその頃、近くのビルの屋上にびっくりするほどの鉄塔があるのに気づきました。放っておけないほど気になったので、管理者をさがして聞いてみると、携帯電話の基地局だということでした。設置するとビルの収入になるとの説明でした。
またその頃、階下が歯科クリニックになり、時を同じくして娘達の病状が悪化し、猫も原因不明のまま手足がマヒして死んでしまったので、環境を変えようと思い引っ越しました。
新しい家は木立に囲まれ、眺望もよく、気分的に明るくなりました。娘達は玄米を食し、無農薬無化学肥料の野菜、無添加の食品を食べ、脂質off、糖質offを心がける食養生で少し落ち着いてきていたので、ぎゅうぎゅう詰めの狭い部屋から、家族4人で住める、化学物質の揮発がおさまった家に再び引っ越しました。娘達の病状が悪化しないように周到に選んだ家でした。しかし、この家は緑は豊かなのですが、四方のビルに携帯電話の基地局が乱立する高周波電磁波の高い環境でしたので、窓にシールド材を貼り、網戸の金網をステンレス製にし、電磁波を反射する機能を持つカーテンをして、電磁波数値を100分の1まで落としました。それでも、屋内の所々に電磁波のホットスポットが点在する不思議な空間を持つ家でした。引っ越したその夜から、ほとんど鳴き声を出したことのない生き残った猫が、終日鳴き止まず、2・3ヶ月後から飛び上がれなくなり、歩行困難になり、時々てんかんのような発作を起こすようになりました。かかりつけの医師から、神経系が犯されているようだが、原因不明との診断を受け、死んでしまいました。冷蔵庫の上でくつろぐのが大好きだった、先に死んでしまった猫と、2匹は同じ経過を辿り死に至りました。
一方、娘達は通達の行き違いから施工された、室内の塗装材(国が使用を認めているペンキ)の影響(?)で、再び重症化しましたが、食養生と昔の人の知恵「しょうがシップ」を3ヶ月ほど施し、外出できるほどに回復しました。
私はと言うと、睡眠時に幻覚におそわれるようになり、大声を発して家人を慌てさせたりするようになりました。不眠症は私に時々やってくる習慣病みたいなもので、結構慣れっこになっており、苦しまずに覚醒中を過ごせるのですが、この時ばかりは眠っているのか、醒きているのか、皆目わからない状態になり、さすがに戸惑いました。電磁波を測定してみると、安全と思っていた枕下が、この家の最高の値を示していました。すぐにベッドを数値の一番低い場所に移し、その後は夜中の騒動は収まりました。
同時進行的に携帯電話とカーナビ、大きい音に反応し、耳管開放症のような症状と、胸苦しさに悩まされるようになっていたので、この二つの使用を止めました。使用を止めたことで解放感と共に爽快感を味わうことができるようになりました。

☆低周波電磁波のこと

あの夜中の悪夢のような体験後、珪藻土の壁塗り職人にして電磁波測定士の伊藤辰哉さんに出会いました。そして低周波電磁波の低減方法を知りました。パソコン類はプラグに差し込むことで電界を除去できる「エルマクリーン」を取り付け、アース端子のついた家電類はアースを取り、屋内配線からの低周波被曝をさけるために、ベッドやソファーを壁面から離し(できれば60cmくらい)、ベッドは電磁波シールド付きマットを敷き、マットからもエルマクリーンでアースを取りました。マットからのアースは効果覿面で、身体の冷え、いわゆる低体温状態がおさまりました。今にしておもえば、高周波をシールドした事によって、屋内の電磁波が行き場を失い、、密室で高周波が反射を繰り返す「複合被曝」と呼ばれる状態に陥っていたように感じます。

☆最悪の頃の体調

聴覚障害、視力低下、睡眠障害、中途覚醒、胸苦しさ、背中の痛み、身体中移動する神経の痛み、記憶障害、下痢、首のこわばり、頻繁なこむら返り、尿道の痛み、失禁、大量のつば、坐骨神経痛、頭痛、歯茎の炎症、口の中の荒れ、その他諸々、さながら不定愁訴の塊のようでした。娘達のことといい、猫達の死といい、まるで難民のような転居事情といい、はた目から見れば、不幸を絵にしたような我が家でしたが、私はなぜか不幸ではありませんでした。たくさん歩き(多いときは4~5キロ)、自分の身体と地球にやさしいものを食べ、生まれて初めて人の役に立てるかもと逆に希望が膨らみました。

☆CSSという概念との出会い

どのようにしたら私の経験を社会や未来に役立てることができるか、色々模索している時、市民健康ラボラトリー設立間近の小田博子さんに出会いました。 小田さんは熱心にCSSについて語っていました。私は彼女から借りたこの概念についてのぶ厚い資料を熟読しました。専門的で私にとってわからぬことだらけの資料でしたが、直感的に、我が家の体験や、その体験から生じた数々の疑問を解消してくれる概念だと感じました。簡潔な言葉で要約された以下の文を紹介します。
「CSS(Central Sensitivity Syndromes)・中枢性過敏症候群は、人体に繰り返し微細な刺激を加え続けた結果として、脳中枢が過敏になり、些細な刺激に対しても痛みなどの症状を示す症候群です。Wind up 現象が具体的な疾患として表出したものです。」
この概念、CSSの代表疾患である線維筋痛症の研究を通して、アメリカではもはや定説となってきているとのこと。この概念が公徳心の高い研究者や医師に深く研究されることによって、また、受容されることによって、希望を失っている人々が一日でも早く、一人でも多く救われることを心から願っています。
この概念から見えてくることは、2010年に発行されたミーア・コルボーン博士の書籍「奪われし未来」で見えたことと不思議な一致性があるように思います。つまり、微細な刺激の繰り返しと、微量な環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の関与、両方ともに規準値以下であれば安全という説に疑いがさしはさまれています。

☆食べもので気をつけていること

うかつなことに、60才近くになるまで、人間の身体が食べるものによってできていることに、本当の意味で気づいていませんでした。分子生物学者の福岡伸一さんは、食べたものは、すぐに高速分解・吸収され、60兆ある細胞にまんべんなく行きわたり、3ヶ月ほどである意味別の人間になっているという意味のことをおっしゃっています。人工的に作られたものは分解されずに体内に蓄積していくともおっしゃっています。化学物質過敏症や電磁波過敏症が突然発症する訳やメカニズムを、示唆してくれるお話しだと思います。CSSの概念とともに原因不明の数々の現代病の原因解明に明かりが灯りそうな気がします。
実は私も化学物質過敏の傾向をもっているので、食は大切にしています。お米や野菜は自分の身体だけではなく、土も水も、あるいは大気もかもしれませんが、汚染する恐れのある農薬や肥料を使わないもの、そして次世代にどのような影響を与えるかわからない遺伝子組み換え、それをしていないものを選んで食べています。加工品は無添加のもの。肉を食べる時は、なるべく放牧されたもの、肥育や人工受精など人間の手が入っていないもの、その動物の食性にあった食べものを食べているもの。抗生物質投与がなされていないもの。魚介類は、抗生物質投与がなされていない天然のもの等々。
いずれも現時点では高価ですが、病気のリスクを考えれば、医療費のことを考えれば、あながち高価とは言えないと思います。食べるもので身体ができあがっていることを考えれば、食にお金をかけるのは、あたり前だと思います。体内の酸化防止、そして免疫力を高めたり、体内に溜め込まれたものを排出する力を持つ食べものをもっと大切にしたいものです。
また、農業や漁業や食品を供給してくれる人々が豊かに暮らせるように、応分の代価を払うことは、市民としてあたりまえだと思います。

☆体調を整えるためにしていること

油断すると、すぐに歯がガタガタになり歯ぐきの炎症がおこるので、歯みがき、歯間ブラシの励行と共になすの黒焼き粉で歯ぐきのマッサージをしています。過去にユラユラしていたぬく他ないと考えていた歯がしっかりした経験があります。
「あいうべ体操」をしています。もう3年ほどしてますが、口もと、あごの線がスッキリしますし、体調が崩れません。
足指体操、これはつまづかなくなります。
かぜの予防にはレンコンのしぼり汁にくずでトロミをつけ、しょうがをしぼってしょう油をたらしていただきます。
口の中があれた時は、ビタミンの多いレモンや果物を、微量栄養素が足りないと感じた時には、それらを含んだ野菜等で補います。
うちみには、豆腐シップをします。おだやかに炎症をおさえます。あざがほとんどできません。
少しの発熱は、キャベツや白菜を額にのせます。その姿はチョンまげの侍みたいで笑ってしまいますが、実におだやかに熱を取ってくれます。
体調不良が高じた時は、還元力の高いバスソルトを入れた塩湯に入ります。塩はとっても不思議です。以前足指がただれて、何も効果を発揮せず、病院から処方してもらった薬でさえも悪化の原因になった時、たまたまキーパワーソルトという塩を持っていて、水で溶いて毎日患部を洗いました。一週間もかからぬうちに完治しました。
毎朝一番に梅醤番茶を飲みます。生命力が衰えていると言われてお灸をすえたこともあります。
迷信として捨てられていた昔の人々の知恵が、メディアでもクローズアップされている近頃、感慨深いものがあります。我が家では化学的に製造された薬品が、ことごとく症状悪化の原因になってしまうので、昔ながらの養生で健康を保っています。

☆私のミッション

私は縁あって、ここ9年ほど食育推進に関わっています。今まではおいしく楽しく社会と未来を変えよう!というキャッチフレーズで活動をしてきましたが、今年は思い切って美味しい革命に舵を切ってみようと思っています。アメリカでは20数年前にアリス・ウォーターズさんが始められたのですが、現地を訪ねてみると結構根づいています。私の方では、主体的な市民の4つのアクション(選ぶ・作る・買う・食べる)で、五方よし(自分・関係する人々・生きとし生けるもの・社会・未来、の5つのHappy)を成し遂げられないかと思っています。4つのアクションのキーワードは「自分の身体と地球にやさしいもの」です。私たちのネットワークは主体的な市民へのプログラムとして、講師派遣、自分で食べる物を作るNOKOファームショップ(能古島の体験農場)、環境や食べ物を深く知るやさしい生活研究カフェを行っています。また主体的市民同志をつなぐプログラムとして、食育人交流会、食育人MAPづくり、食育祭を開催していきます。そして予防原則という考え方を定着させていけたらと思っています。予防原則とは、ヨーロッパやアメリカではかなり機能している考え方で、科学的な証明が充分ではなくとも、将来、重大な事態を引き起こす恐れがある場合は、立ち止まったり、中止したり、変更したりすることができるという考え方で、ドイツが3.11以後取った原発政策は、それにあたると思います。

この患者さんの発症経過や、症状が出る原因を考えると、今の医学部で教える内容では、対策として全く足りないのは明らかです。
大中さんは有機食材の他、自分で調べ、工夫したことで症状の改善に繋げています。

現代の医学は、パスツールを始めとする、「ペスト菌やコレラ菌を抗生物質(薬)で叩く」という治療モデルから始まっており、身体から有害物質を除去する発想がそもそもありません。

また、最近の科学によって明らかになってきた、約60種あるという必須栄養素不足によって体調不良が起こる(かっけやかい血症が代表的)という重要な事実も、パスツール由来のこの治療モデルではまったく考慮されていません。

いろいろなCSS患者さんに話を聞くと、発症時に、偏食による必須栄養素不足や、それによる代謝異常があったのでないかと疑われる例がかなりあります。

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