患者の声「栄養治療で回復」

患者・ニコ

(化学物質過敏症、慢性疲労症候群を発症。自分で学んだことを含め、栄養療法での回復経験をレポートします)

「中枢感作症候群(中枢性過敏症候群):Central Sensitivity Syndromes:CSS」

脳細胞の栄養消耗が発症の基礎にあるとすれば、分子矯正医学(栄養治療)が勧められます」

患者・ニコ

(小田:注)
市民健康ラボラトリーを始めてから、CSS患者本人やその家族に、アスペルガーやADHDなどの、いわゆる発達障害が多くおられることに気づきました。

個人的に伺える範囲で聞いただけでも、すでに5人以上のケースで、ご本人かご家族に発達障害の方がおられます。(これは、両者の発症原因に重要な共通項がある可能性を窺わせます。

患者の声「栄養治療で回復」のニコさんも、やはり発達障害を持っておられます。上記の事情は、病気からの回復や治療を考える上で重要と考え、ご本人の了解のうえでその事実も付記して頂いています。
(いただいた文章を分りやすいように補足、編集しています。)

(本文)

私は中枢感作症候群でくくられる症候群の基礎治療に、分子矯正医学(栄養治療)を勧めています。

まるで兄弟姉妹の病であるかのごとく、中枢感作症候群患者が、次々と同じくくりの症候群を併発する状況を考え、私は分子矯正医学を、身体の基礎条件を治療する療法のひとつだと考えています。

発症した当初、一般の総合病院を含めて、体調不良の原因を広くドクターショッピングしました。それでも一般検査による異常が確認できず、さまざまなことを探りつつ今日に至っています。

分子矯正医学とは?

私はルドルフ・シェーンハイマー(下記HP参照)が提唱した「身体構成要素の動的状態」を、栄養治療を理解する基礎としました。

http://www.seinan-jo.ac.jp/university/nutrition/history/paper14.htm

※注
日本の医学部には、栄養学の講義がほとんどありません。ルドルフ・シェーンハイマーが提唱した上記のような新しい観点は教育に取り入れられておらず、健康保険内で行う治療にもまったく取り入れられていません。

この、「身体構成要素の動的状態」を簡単に説明すると、「口から入った栄養素が体内で古い細胞と入れ替わり、古い細胞の構成物質は排泄物として体外に出され細胞の状態は常に変動し続ける」というしくみを説明した理論です。
これは分りやすく「ヒトの体は口から入る物で全部作られる」と解釈できます。

以前の私は、食品の合成添加物に無頓着な食事をしていました。
見かけの栄養素バランスだけは良い食事でしたが、本当の栄養摂取と安全な食品への理解が及んでいませんでした。

その果てに起こったのが中枢感作症候群だと言えます。

もちろん、中枢感作症候群が起こる要因は、交響曲のように複雑です。(加齢・過度の痛み・化学物質を含めたトータルストレッサーなど)

私の身体では、ルドルフ・シェーンハイマーが提唱した「身体構成要素の動的状態」の観点から言っても、種々の相対的刺激への代謝処理をまかなえる栄養素摂取ができておらず、身体が逆境に打ち克てるような細胞の状態ではなかったようです。

自分の生活履歴を振返ってみると、そのほかの要因としては、腸カンジダによる栄養吸収不良が思い当たります。

(下記、筑波大学HPを参照)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140116/

※注
カンジダ菌は、腸内に在住するイースト菌の一種で、免疫機能が衰えると爆発的な感染症を起こします。また、過剰に増殖すると食物過敏症の原因にもなることが分っています。
(出典:「第三の医学」メルビン・ウァーバック著・日本評論社1996年出版)

(免疫機能の低下によって)腸内の悪玉菌として働く腸カンジダにより、代謝に必要な栄養素が体内に吸収されず、有害物質影響だけが腸から血流に乗り、脳や全身に送られ、その結果として、私の場合、「刺激に弱いくたびれ脳細胞と、くたびれ身体細胞」ができあがっていたようです。

他にはPCの排気もよくなく、体調により、クシャミ症状、鼻むずむずが、激しく出ます。

(中枢性過敏症候群の患者は、さまざまな刺激源を識別して負荷を減らすことがぜひとも必要です。)

当時の私(ニコ)の症状は、以下の通りでした。

思考力低下・記憶困難・チック・吃音・不審なアザ・皮膚が化粧に弱くうろこ状になりやすい・血糖値が安定しにくく低血糖気味になりやすい・虫刺され跡が数年残る・レストレッグス症状による過度の不眠等々、

しかしながら、腸カンジダ治療と、栄養治療後に、前述の症状は大幅に改善もしくは、ほぼ消失しました。

その際、投薬による治療は一切受けず。

私は一切投薬による治療は受けていません。
地元の大学病院では、上記の腸カンジダ菌の働きが理解されていなかったですし、また私の症状の中の「慢性疲労症候群」の病態への理解が欠如していたためです。

慢性疲労症候群に関する厚生労働研究班の研究では、化学物質の影響も確認されていますが、このような(慢性疲労症候群の病態への理解が欠如している)病院への通院は、(私の薬剤過敏の体質を考えても)治療を遠慮したくて当然ですよね!?

慢性疲労症候群

今、私は慢性疲労症候群がぶり返しています。

今回は、突然、極度の「疲労感」が出現し、まさに刺激が重なると脳中枢がそれを増幅し、症状が出る「中枢感作」という現象を実感しました。

今回は、眠っても食べても回復効果が無く、緩やかな生活をすることだけが、回復への道でした。

回復に向けての体力づくりなど、限度を超えて負荷が過剰になった場合(個人の閾値を越える刺激が入る)、出る事があるようです。

「栄養治療で中枢性過敏症候群が治ると言うなら、なぜ慢性疲労症候群がぶり返したの?」と疑問に思いますが、私の場合、個々のストレッサーへの配慮を怠ったために、過度の疲労感が「ぶり返した」と思います。

それでも栄養治療に関して言えば、完治には至らないものの、寝たきり廃人同然を回避でき、こうして文章を作れて、家事も出来るという結果に至っています。

ストレスのCSSへの関与

精神神経免疫学によれば、上記のようにさまざまなストレスがあると、脳内の免疫・分泌・神経伝達経路に悪影響を及ぼし、もともとの病気を悪化させます。

※参考
「精神神経免疫学的治療の重要性について」
(独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部、 山村隆医師のHPより

これと、国立精神神経医療研究センターの研究「鬱と栄養素欠乏の関係」をみると、ストレスは、体内で行われるさまざまな代謝活動に大きな負担をかけ、執拗に栄養素を消費すると言えそうです。

つまり、ストレス過多は必須栄養素不足になりやすく、より多くの必須栄養素が必要になると言えます。

かつ、 私の場合は、PTSDの原因を繰り返し突きつけられる状況下で暮らしています。
佐賀大学が行っているPTSD治療の一つである、EMDR治療から、音によるEMDR治療を独自で施し、大幅な改善があるものの、直接刺激が大きすぎるため克服に至りません。

http://www.emdr.jp/
(日本EMDR学会)

※注
「線維筋痛症から回復した患者のHP」で、中枢感作による疾患群を示す丸い図を提示していますが、この図の中に、PTSDが含まれています。
CSS患者は、その発症前にも厳しい人生を歩んでいる人が多く、また発症後は激烈な痛みなど過酷な症状が出るため、多くの患者に、このPTSDがありそうです。

患者それぞれの閾値を上げて行く治療のなかに、PTSD治療を含めることは有益だと言えます。
ただし日本では、海外でPTSDに有効とされている治療の多く(特に薬を使わない治療)が広まらず、また健康保険適用にもなっていません。それぞれが有効治療を探す必要がありそうです。)

上記のほかに、私の場合はストレスによるビタミンB欠乏がひどいと思います。そのために栄養素治療の効果が削がれていると感じます。

※注
ビタミン欠乏症は、上記の:「第三の医学」メルビン・ウァーバック著・日本評論社1996年出版 201ページに、分りやすい記述があります。 これによれば、ビタミンB1欠乏によって、「胸や腹の痛み、睡眠の乱れ、下痢、発熱、慢性疲労など」が出現し、ビタミンB1投与で軽くなっています。

ただし、この稿では「膝の痛みにコンドロイチン」「痛みにはビタミンB1」という形の、単一栄養素による「対処療法」的な摂取を勧めていません。
効果を上げるためには、まず、全体的な栄養素不足が解消されていることが必須です。)

現在は、筋力低下症状と高次脳機能障害による記憶困難などがあります。

また、一般的に、添加物食や砂糖除去対策をしない場合も、ビタミンB群を消耗しますし、これら添加物や砂糖の、CSSへの影響も考える必要があると思います。

発達障害について

私にはアスペルガー診断の履歴があります。
これを知っていく中で、発達障害や自閉症と呼ばれる患者の中に、‘ビタミンB欠乏性症状’などの栄養不足の人がいることを知りました。(現実的には私自身がそうでした。)

(長野県リハビリテーションセンターほか資料を読むと、私の「高次脳機能障害」と、ビタミンB群欠乏の関係もありそうです。)

国内外の、臨床に栄養治療を用いている医師の間では、発達障害にも有効と言われていますが、背景にはこのような研究があると思います。

いまは、国内でも栄養治療による発達障害への治療も行われるようになっています。この分野の研究は、今後ますます進むと思います。
(脳の構造的障害が確認されている以外のお子さんの)発達障害の治療を探しておられる方は、この栄養治療が、その選択肢の一つになると思います。

ここでふたたび、栄養治療とは?

私は現在、いくつか難しい病を抱えていますが、栄養治療による効果で寝たきり寸前はおろか、廃人同然の状況から、このように文章を作ることができるまでに回復しています。

栄養治療とは、体内のステロイドホルモンを自然合成するための栄養素補充治療でもあり、
(注:ステロイドホルモンは、もともと体内でつくられるさまざまなホルモンの一つです。長期に使うと大きな害を及ぼす化学合成されたステロイド剤と違い、体内でつくられるステロイドホルモンは無害です。)
私にとっては、以前の寝たきり寸前で言葉もあやつれない状態から、家事が出来る身体を維持できるまでの効果があった治療と言えます。

総合的に言えば、栄養治療とは、疲労や加齢、化学物質的負荷や、精神的負荷や、環境的負荷、その他もろもろのために消耗される代謝エネルギーを補う、身体の為の「必須材料調達治療」です。

国内の栄養治療における、発達障害を含めた臨床、つまり治療における草分けの一人は、溝口徹医師と言えると思います。

:溝口徹・新宿溝口クリニック院長
「うつは食べ物が原因だった」
(上記の、国立精神神経医療研究センターの研究「鬱と栄養素欠乏の関係」参照)
「病気を治す!症状別のおくすりスープ」など著書多数

栄養治療の基本は、食事とサプリメントの併用です。
自分で学習できる方なら独自で治療が可能ですが、学習が不可能な方は、上記のような専門のクリニックがあります。

サプリメント治療には「欠乏症・過剰症」があり、自己流での闇雲な摂取による事故は自己責任によります。

・治療に取り組むための一時的な体力を確保するには、3カ月を目途に、ビタミンC:カルシウム:マグネシウムの摂取比率が4:2:1が、目安です。

・他には、各栄養素を、各サプリメントの一日の標準量を摂ります。

*上記で、そこそこの回復が可能。乳酸菌による腸内環境整備も有効です。
*ビタミンCは、2gが劇的効果もない代わりに、過剰症による害もない容量です。

*ただし、個人の病歴によって使用不可の場合がありますし、補酵素に関しては専門家とご相談ください。自己責任で判断くださるようお願いします。

また、栄養治療に際して、グルタチオンやグルクロノラクトンは、強力な解毒代謝補助効果があります。
(私がグルタチオンによる解毒に使っているのはブロッコリー抽出物です)
嗅覚過敏の改善や急な化学物質的ストレッサーの排除に役立つと思います。

(注:グルタチオンに関しては、グルタチオン点滴といった手段で、専門のクリニックで治療を受けることもできます。

検索エンジンで、
「グルタチオン点滴・線維筋痛症」
栄養素療法なら
[マイヤーズカクテル・線維筋痛症]
で検索すると、これを行っているクリニックがヒットします。

海外では、いわゆる分子栄養学を基礎にしたこれらの治療が、線維筋痛症などの難病に有効という結果が出ており、国内でも多くの自由診療のクリニックが、この治療を取り入れています。
クリニックによっては線維筋痛症治療に関するデータをHPに載せているところもあります。

手前味噌で恐縮ですが、ブログ「一般医学から見る化学物質過敏症」にその他治療のヒントや病態への理解について情報を記しています。(ニコ)

私のように環境医学の先生が指導する「化学物質負荷の除去や回避対策」を初期段階でおろそかにしていると、果てはミトコンドリアの影響が関わってくるようです。

治療は、早期に解毒・化学物質の除去と回避を行い、栄養的補助治療を経て、余分な心理的ストレスを排除する、が基本だと思います。

注1:「サプリメントに関して」

私(小田)個人は、サプリメントを選択する場合には、

  • 原料に遺伝子組み換え作物を使っていないこと、
  • 有機作物が原料であること(無農薬が原則)
  • 製品化に際して、合成保存料、着色料、合成甘味料などの食品添加物を一切添加していないこと、
を重視しています。私自身が使っている栄養補助食品は、上記の条件をすべてクリアしています。

これらの点をメーカーに問い合わせたとき、品質管理部などで責任ある回答をしてくれないメーカーは、使うのを再考した方がいいかもしれません。
農薬や添加物の害の知識が広まり、より安全なサプリメントも少しずつ増えています。

自分で回復のためのサプリメントを選ぶときには、栄養治療に行っている医師や、クリニックで採用している製品が、選ぶ参考になるかもしれません。(下記は栄養治療にサプリメントを採用している医師のブログ)

http://ameblo.jp/lisalisanet/entry-10915805364.html
(土井里紗内科医による「そのサプリが効かない訳」)

注2:「栄養療法」の参考書

栄養療法に関しては、まずは基礎的な知識を身につけて、自分の症状の個性をしっかりと把握し、知識を生かしていくことが大事だと思います。その際の参考本を付記します。

「医学常識はウソだらけ」
(分子生物学が明かす生命の法則)三石巌著 祥伝社

*日本の分子栄養学の草分けによる一般向けの本ですが、基本が抑えられており、基礎的な考え方が学べます。

著名な保守派の論客である渡部昇一氏がこの本を「不勉強な医師たちのマニュアル治療を徹底的に論破」と評価しています。

著者の三石巌氏はもとは物理学者で、自身の白内障を東大病院の教授に診せたところ、「失明したら来てください」と言われ失望したことをきっかけに、自身で分子生物学を学び、それに基づいた分子栄養学を創設し、この分子栄養学に基づき自身で白内障を治しています。専門書も含め、著書は300冊以上。

この本で三石氏は、
「今の医学界は、他の分野で治療に役立つ新しい発見があっても耳を貸そうとしない。成果を生かそうとせず患者に間違った治療をしている。

いまの医学界全体が問題を抱えており、医学教育のシステム全体も見直すべき点が多い。なにより、他の学問に対して極めて閉鎖的な医学界の体質を変えなければならない。

ある治療がひとたび医学常識として定着してしまうと、誰もそれを疑わなくなる。医者は、自分たちの常識が(科学の進歩によって)一転して非常識になるとは思っていないのである」
と、医学界の現状を痛烈に批判しています。

本の内容を見ると、医師がよく言う内容が、単なる思い込みや伝聞に基づいていることが多く、また、他の分野で明らかになった科学的事実に照らすと間違っている例が多いことに驚かされます。

メルビン・ウァーバック(カリフォルニア大臨床教授)著
「栄養療法事典・病気を食事と栄養で治す自然な療法」

食事の改善、ビタミンミネラル、酵素、薬草などで病気を治す処方箋です。
副作用がなく効果的な「第三世代の医学」の名著であり、取り上げられている疾患には、過敏性腸症候群や慢性疲労症候群などのCSSも含まれています。
100以上の種類の疾患と栄養の関連を記した記念碑的な本として、世界中で版を重ねています。
栄養療法を行う医師や専門家も使えるような詳細な内容で、一般にはとっつきにくいかもしれません。一般向けには上記の「医学常識はウソだらけ」がお勧めです。

*メルビン・ウァーバックは、「病原菌を薬で叩く」と言った、パスツール由来の現代医学を視野の狭い「第二の医学」とし、栄養や心理などより広い、より合理的な視野に立った「第三の医学」を提唱したことで知られています。

上記に準じた本としては、

「栄養で病気が治る」(ジョナサン・ライト博士の栄養療法・サプリメントをよく知るための本)
檜山圭一著 四海書房1999年出版

*アメリカの「タホマ・クリニック」で行われている栄養療法を詳細に紹介しています。
上記の栄養療法事典もそうなのですが、こちらにも過敏症への言及があります。
食事療法はさまざまな過敏症に対する対応力が高いように思います。

国内の医学部で栄養療法を学んでいない医師も、一般の人も、栄養療法がどのようなもので、どのような効果が望めるか分りやすいと思います。

「野菜だけで病気を治す」(石原結實著 廣済堂出版2007年出版)

石原医師は、分子栄養学ではなく、野菜に含まれるファイトケミカル(植物中の化学物質)を治療上での基礎にしていますが、処方の中に共通点がたくさんあり、一般向けで分りやすいです。

また、痛みへの対応策が豊富です。野菜を食べたり、煎じて湿布したりしても閾値は下がらないので、FM患者に有益な内容もたくさんあります。

上記は絶版の本が多いですが、いずれも中古本がアマゾンで買えます。

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